家具選びのコツ

おすすめオフィスチェアの選び方|人間工学から見た理想の椅子

オフィスチェア

 

一般社団法人日本オフィス家具協会の「ワーカーアンケート集計・分析結果報告」という調査によれば、オフィスチェアの座り心地は、特に女性が気にしているようです(気にする男性34.0パーセントに対して、女性は78.4パーセントとあります)。また、使用しているオフィス家具に対して大なり小なり不満を持っている方が、55.1パーセントいることも示されています。

椅子だけで見た場合の満足度はわかりませんが、おそらく多くの方が「もっと良いオフィスチェアがほしい」と思っているのではないでしょうか。椅子に座って長時間仕事をしていると、背中が張ったり腰痛が出たりして悩んでいる方も多いと思います。

そこで今回は、オフィスチェアや自宅の書斎用の椅子など、仕事で使う椅子選びのポイントを整理してみます。今は特にノートパソコンで仕事する方が多いと思うので、その前提でまとめます。

 

高さ|適切な差尺は30センチ前後。

通常、オフィスの椅子は高さを調節できると思いますが、念のため適切な高さについてもふれておきたいと思います。

椅子の高さを考えるときに大事なのは、差尺です。差尺とは「椅子の座面から、机の天板までの高さ」を意味します。

 

日本工業規格(JIS)では、オフィス机の高さは67センチか70センチとされています。一方、オフィスチェアの座面の高さは、38〜41センチ(可変式のものは、この範囲を含んで調整できなければならない)です。
(机の高さが2種類あるのは、男性と女性の身長差を考慮したためです)

JIS規格に沿ったオフィスチェア・デスクを使った場合の差尺

こちらから単純に計算しますと、規格に沿った製品を使った場合、差尺(机の高さ − 椅子の座面の高さ)は26〜32センチとなります。だいたい30センチ前後ですね。これが最適な差尺であると考えられます。

ただ研究者によっては、差尺は(座高/3)− 1で求められる値が適切とする方もいるなど、意見が分かれます。上記式にあてはめると、座高が80センチの私にとって適切な差尺は25.6センチとなり、JIS規格から計算した差尺より5センチも値が小さくなります。

 

このように、差尺はあくまでも目安です。だいたい30センチ前後に合わせて、そこから自分に合った椅子の高さを探してみるのが良いでしょう。足元がヒールかスリッパかなどによっても適切な差尺は変わってくるので、いろいろ試してみてください(そのためにも、やはりオフィスチェアは高さを調節できるものが好ましいです)

 

肘置き|好きな姿勢が取りたい方はないものを。腰痛持ちの方はあるものを。

オフィスチェアの肘置き

 

肘置きの有無は、主に次の3点から考えましょう。

  • 椅子が机に収まるかどうか
  • 椅子の上でいろんな姿勢を取るかどうか
  • 腰痛を持っているかどうか

 

椅子が机に収まるかどうか

机の高さが低い場合、椅子の高さによっては肘置きがぶつかって入らない可能性があります。ですが、入る高さにまで座面を下げると、今度は座りにくくなります。

 

椅子の上でいろんな姿勢を取るかどうか

これはダイニングチェアの話ですが、ある論文によると、食後休憩中などリラックスしているときには、実に80パーセント以上の方が、立て膝や片足だけあぐらを組んだり椅子に乗せたりといった姿勢を取っていたそうです。

最近はオフィスでも、正座したり椅子を使わないで立って仕事をしたりと、いろいろな仕事姿勢が見られるようになりました。そのため会社が社員の椅子を購入するときは、肘置きを取り外しできるタイプが良いでしょう。

 

腰痛を持っているかどうか

腰痛を抱えている方の中には「座っているより立っているほうが楽」という方も多いのではないでしょうか。実は私もその一人です。

椅子に座った姿勢は、実は上半身にかなりの負担がかかっています。特に腰の椎間板にかかる圧力で見ますと、立っているとき(2.1キログラム)よりも、椅子に座っているとき(2.3キログラム)や、あぐらをかいているとき(5.1〜5.8キログラム)のほうが負担が大きいです(『新装 インテリアの人間工学』より引用)

 

肘置きに腕を置きながら仕事をすると、多少ですが腰への負担を軽減できます。ちなみに奥行きがある机なら、パソコンを少し奥に置いて、腕を机に乗せながら作業すると同じ効果を得られます。机が広めの方は、ぜひ試してみてください。

なお、肘置きが高すぎると肩が凝るので、高さを調整できる椅子がベターです。

 

背もたれ|身長(座高)の高い人は上部の形状に注意。

オフィスチェアの背もたれ

 

人は背もたれの角度を2度だけ変えても違いがわかるそうです。よって、それだけ座り心地に影響するポイントと言えるでしょう。

椅子の高さが同じ場合、パソコンを見る視線の角度を最適化すると(ある研究によれば、正面を見た姿勢から18度ほど落とした状態)、身長の高い人はうまく画面が見えません。しかし椅子を低くして対処すると、今度はおしりが沈んで腰痛の原因にもなり得ます。

このとき背もたれに体を預けたり、背中を少し倒したりして視線を下げることになると思います。そのため、背もたれの上部は胸郭から首、頭にかけての自然なカーブに沿った形状であることが望ましいです。ある論文によりますと、この理想の角度は79度とされています。

理想的なノートパソコン作業用のオフィスチェアの形状

(画像は、石倉啓行氏・山崎信寿氏の論文「ノートPC作業用オフィスチェアの開発」より引用。左上にある79度が、この背もたれ上部の最適な角度です)

 

また同論文によれば、背もたれは22度ほど倒した(座面と背もたれの成す角度が68度の)状態が最も座りやすいようです(上の図の左上、68度とあるところです)。背もたれの上と下で適切な角度が違うので注意してください。

とはいえ、お店に分度器を持っていって角度を測るわけにもいきません。必ず一度、実際に座ってみて、いろんな姿勢を試して、楽な姿勢が取れるか確かめてみるのが良いでしょう。

 

座面|臀部に体重がかかるのがベスト。太ももにかかるのはアウト。

オフィスチェアに座りすぎて背中の痛めた人

 

椅子に長く座っていると、尾てい骨のあたりが痛くなったり、座り心地が悪くて前方に浅く座ったものの今度は背中が張ってきたり、といった経験はないでしょうか。座面が合っていないと、こうしたデメリットがあります。

座面のポイントは、体重がおしり(臀部)にきちんとかかるかどうか。そして太もも(大腿部)の裏が圧迫されないかどうかです。

人はおしりで体重を支えられますが、太ももは圧力に弱く、長いあいだ力がかかると違和感を覚えます。そのため椅子に座ったとき、おしりに体重がしっかりかかる座面がベストです。椅子の中心だけが柔らかい、おしりが沈むこむ(太ももの裏が圧迫される)座面は避けましょう。
(座面の前方が下がる機能を持つオフィスチェアがありますが、これは太ももへの負担を減らして座り心地を改善する効果を狙ったものです)

ただ、座面の感触を実際に座って確認してから購入するのがベストですが、オフィスチェアは既に用意されているケースが大半のため、そうもいきません。この場合、体圧分散を考慮したクッションを敷くなどして対策してみましょう。多少は改善できます。

 

奥行き|座面の前方が太ももを圧迫しない程度のものを。

奥行きが長いと、膝の裏に座面の前方があたってしまい、これによって太ももが圧迫されると、人は違和感を覚えます(座面のポイントでお伝えしたのと同じです)。そのため座面の前方と膝裏のあいだには、ある程度のスペースがあるのが望ましいです。

では、椅子の前方に座って膝裏を座面から離せば解決かというと、そうもいきません。今度は背中や腰を支えるものがなくなって、肩や背中が疲れてきてしまいます。オフィスチェアを購入するときは、膝裏スペースを考慮した奥行きを踏まえて選びましょう。

 

前傾チルト機能|仕事に集中して、つい前傾してしまう方におすすめ。

パソコン仕事に没頭していると、気づかないうちに姿勢が前傾していることはないでしょうか。こうなると背中が背もたれから離れてしまうため、体が支えを失って肩や背中、腰に負担がかかりますし、姿勢も悪くなってしまいます。

前傾チルト機能とは、前傾に合わせて自然と椅子が座角を変え、背中が背もたれから離れないようにしてくれる機能です。これによって楽な姿勢を保てるため、体への負担を減らせます。

ただチルト機能がついたオフィスチェアは非常に便利な一方、値段もそれなりのものが多いです。

 

理論はあくまで目安。実際に座り心地を確かめてから購入を。

ここまでどんなオフィスチェアを選ぶのが良いのか、高さや差尺などさまざまな基準を紹介してきました。

ですが、最も大事なのは「自分が使いやすいかどうか」「自分にとって座り心地が良いかどうか」です。

いくら数値的に正しくても、人の身長や体型、仕事スタイルはさまざま。当然、人それぞれピッタリの椅子は変わってきます。

そのため、科学的にどんな椅子が良いのか、まずそれを基準にいくつか良さそうな椅子を見定め、そこからご自身の好みに応じて取捨選択していく、そんな選び方がおすすめです。

 

参考資料・サイト

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